応用事例開発計画¶
作成日: 2026-08-23
対象期間: 2026-08-24〜2026-10-18(8週間)
1. 目的と成功条件¶
本計画は Application use-case development roadmap を、実装・検証・ドキュメントの作業単位に分解した実行計画である。 対象は次の4事例とし、スマートフォンGNSSとUAVは調査に限定する。
- 都市部RTK途絶時のIMU/ZUPT/NHC連続測位
- GEONET/IGSデータによる静止測量・基準点測定
- HDマップ・SLAM評価向け参照軌跡パッケージ
- CLAS/MADOCAによる広域サブメートル測位の適用判定
成功は機能の実装完了ではなく、各事例に対して次を満たすこととする。
- 公開または利用者が取得可能な入力から、1コマンドで再実行できる。
.pos、可視化、ログ、要約JSON、出自マニフェストを一組で生成する。- 精度、利用可能率、解状態の比率、正解データカバレッジを分離して判定する。
- 閾値違反は非0で終了し、CIで検出できる。
- 独立した正解がない実行結果を精度実証や
ground truthと表示しない。
2. 実施方針¶
データ分割¶
| 用途 | データ | 利用ルール |
|---|---|---|
| 開発 | PPC Tokyo run1、R2で選定する静止測量例 | 原因調査、実装、閾値候補作成に使用可 |
| ホールドアウト | PPC Tokyo run2/run3、R2の別日または別時間窓 | 開発ゲート通過後に各1回だけ実行。失敗後の調整に使用しない |
| スモーク | 各開発データの短時間スライス | 接続性と成果物形式の確認に限定し、精度根拠にしない |
ホールドアウト実行前に、実行コマンド、設定、入力ハッシュ、 ソフトウェアリビジョン、閾値をマニフェストに凍結する。
共通品質契約¶
各要約JSONは少なくとも次を保持する。名称は事例ごとに変えず、
共通スキーマと事例固有のmetricsに分ける。
| 区分 | 必須内容 |
|---|---|
schema_version |
後方互換性を判定できるバージョン |
inputs |
URL/配布元、ライセンス、ローカルパス、バイト数、SHA-256 |
run |
コマンド、設定、ソフトウェアリビジョン、実行時間 |
frames |
座標系、基準時刻系、高さの種類、アンテナ・レバーアーム |
populations |
全エポック、FIX/FLOAT/劣化、正解マッチ済みの母数 |
metrics |
精度、利用可能率、カバレッジ、収束/途絶メトリクス |
gate |
適用プロファイル、閾値、pass/fail、失敗理由コード |
artifacts |
.pos、KML/PNG、CSV、ログ、マニフェストへの相対パス |
利用者向け状態語彙はusable、degraded、unusableの3段階とする。
個別ソルバのFIX/FLOATはこの状態に直接置き換えず、選択した用途の閾値で判定する。
3. リリース計画¶
| 期間 | マイルストーン | 主成果物 | 終了判定 |
|---|---|---|---|
| 8/24〜9/6 | R1 都市部連続測位 | 修正済み融合処理、プロファイル比較、自動採点バンドル | run1合格後に凍結した設定でrun2/run3を1回ずつ評価 |
| 9/7〜9/27 | R2 日本向け静止測量 | 公開データ取得アダプタ、相対測位/PPPレポート、利用ガイド | クリーン環境で取得〜合否判定を再実行し、公開座標に対して評価 |
| 9/28〜10/11 | R3 参照軌跡パッケージ | バンドル生成/検証コマンド、消費者プロファイル | 再測位なしの検証、PPC正解採点、ROS2/Python消費テストが合格 |
| 10/12〜10/18 | R4 CLAS/MADOCA適用判定 | 取得経路、統合マニフェスト、適用判定表 | 補正途絶の劣化が可視化され、正解があるデータで適用判定が完了 |
R1の原因修正が9/6時点で未完了であっても、失敗結果を合格として扱わない。 R2のデータ整備とR3のバンドル仕様は継続できるが、R1プロファイルの提供は保留する。
4. 作業分解¶
R1: 都市部RTK連続測位(8/24〜9/6)¶
現状のurban-bridge-scoreとCI契約を維持し、まずTokyo run1の最初の発散を修正する。
現在公開されている全区間結果は、IMU only、ZUPT、ZUPT+NHCのいずれも
精度ゲート未達であるため、精度改善なしのプロファイル公開は行わない。
| ID | 期限 | 作業 | 成果物/確認 |
|---|---|---|---|
| R1-01 | 8/24 | run1全区間の現行出力と入力ハッシュを保存 | ベースラインJSON、bridge CSV、実行コマンド、リビジョン |
| R1-02 | 8/25 | bridge CSVから最初の閾値逸脱エポックと最後の正常エポックを特定 | 時刻、位置/速度/姿勢/バイアス、GNSS状態を持つ診断表 |
| R1-03 | 8/26 | 伝搬、方位初期化、速度更新、再アンカーの4系統を切り分け | 原因仮説ごとの再現テストと否定/支持するテレメトリ |
| R1-04 | 8/27〜8/28 | run1の原因を修正し、単体/合成データ回帰テストを追加 | デフォルトOFF時の既存結果が同一、非有限値なし |
| R1-05 | 8/31 | 同一の保存済みRTK .posでIMU only/ZUPT/ZUPT+NHCを全区間比較 |
3系統で完全に同じ入力母集団、同じスコアラを使用 |
| R1-06 | 9/1 | 最大bridge ageと合否閾値をrun1で凍結 | 閾値の根拠、単位、比較母数、失敗理由コードをJSONと設定に記録 |
| R1-07 | 9/2 | run1のワンコマンド全成果物生成をCIに接続 | .pos/KML/PNG/log/summary/segments/manifestを生成し、閾値違反で非0 |
| R1-08 | 9/3〜9/4 | 凍結設定でrun2とrun3を各1回実行 | 設定差分なし、ホールドアウト結果と判定を保存 |
| R1-09 | 9/5〜9/6 | ガイド、KML生成経路、フィールド確認表を確定 | 都市部RTK+IMUガイドから1コマンドで再現 |
R1の合格条件は、正解時刻マッチ、非有限値、RTK対比の利用可能率、 FIXエポックの精度退行、各bridgeの最大水平誤差/ドリフト率/再捕捉ジャンプを すべて判定する。NHCはrun1で勝ち、run2/run3の旋回区間を含む全ゲートに 合格した場合のみ車両プロファイルに採用する。
R2: 日本向け静止測量(9/7〜9/27)¶
R1と重ならないデータ調査のみ8/24から先行できる。ソルバ調整は、 対象局、日付、公開座標、アンテナ情報、配布条件の凍結後に開始する。
| ID | 期限 | 作業 | 成果物/確認 |
|---|---|---|---|
| R2-00 | 9/4 | GEONET近接局またはGEONET/IGS局ペアと観測日を選定 | 局ID、UTC/GPST日付、基線長、観測間隔、URL、配布条件の決定記録 |
| R2-01 | 9/8 | データ契約とディレクトリ配置を凍結 | RINEX obs/nav、SP3/CLK、ANTEX、局座標、チェックサムのマニフェスト |
| R2-02 | 9/9〜9/11 | 取得/展開/物質化アダプタを実装 | キャッシュ、再試行、ハッシュ検証、欠落時fail-closed、手動改名なし |
| R2-03 | 9/14〜9/16 | short-baseline-signoffを選定データに接続 |
推定座標、共分散、公開座標とのENU差、観測時間、解状態をJSON化 |
| R2-04 | 9/17〜9/18 | ppp-static-signoff --fetch-productsを同一局に接続 |
製品取得出自、収束時間、水平/鉛直誤差、解状態をJSON化 |
| R2-05 | 9/21 | 日本の座標・標高・アンテナ契約を実装/文書化 | 参照座標系と元期、楕円体高/標高、ARP/PCO/PCV、変換の有無を明示 |
| R2-06 | 9/22〜9/24 | 10分スモークと測量時間フルランを自動化 | 取得からレポートまでの1コマンド、再実行数値許容差のCI |
| R2-07 | 9/25〜9/27 | 利用ガイドと適用判定を完成 | 相対静止/PPPそれぞれに「基準点に利用可/実演限定」を明示 |
静止測量の合否閾値は、公開座標の品質、座標元期、アンテナ補正を確定後に設定する。 RINEXヘッダの概略座標のみを正解とするゲートは作成しない。
R3: 参照軌跡パッケージ(9/28〜10/11)¶
既存ガイドを、他チームに渡せるバージョン付き バンドルに拡張する。
| ID | 期限 | 作業 | 成果物/確認 |
|---|---|---|---|
| R3-01 | 9/29 | バンドルスキーマとディレクトリ形式を確定 | raw/accepted .pos、KML、PNG、ROS2 metadata、summary、manifest |
| R3-02 | 9/30〜10/2 | 軌跡生成とPPC Applanix正解採点を1コマンド化 | 時刻マッチ、全体/FIX/採用集合ごとの誤差と母数 |
| R3-03 | 10/3〜10/5 | 距離カバレッジ、時刻穴、位置ジャンプ、状態遷移、除外区間を検出 | セグメントCSVと失敗理由コード |
| R3-04 | 10/6 | SLAM評価、マップ試作、可視化の3プロファイルを定義 | 受理解状態、水平/鉛直誤差、カバレッジ、最大gap/jumpの閾値をバージョン管理 |
| R3-05 | 10/7〜10/8 | 再測位しないバンドル検証コマンドを実装 | ハッシュ、スキーマ、フレーム、レバーアーム、閾値のfail-closed検証 |
| R3-06 | 10/9 | ROS2リプレイとPython load_pos()の消費テストを追加 |
GNSS状態列の知識なしで読み込み可能 |
| R3-07 | 10/10〜10/11 | ガイドとサンプルバンドルを確定 | 正解がない場合はcandidate trajectoryと表示 |
レバーアームと対象フレームが未定義のバンドルはunusableとし、
地理座標が連続に見えることだけで受理しない。
R4: CLAS/MADOCA適用判定(10/12〜10/18)¶
既存ガイドとデコード/測位コマンドを、訂正ソースの 受信から利用可否判定までの一つのワークフローに統合する。
| ID | 期限 | 作業 | 成果物/確認 |
|---|---|---|---|
| R4-01 | 10/12 | 再配布可能なL6/RINEX例または決定的取得経路を選定 | URL、配布条件、チェックサム、観測時間窓、正解の役割 |
| R4-02 | 10/13〜10/14 | L6出自、デコード診断、解、正解採点を統合 | 最初の訂正エポック、最初の有効解、未対応メッセージ、fallback数を1マニフェストに記録 |
| R4-03 | 10/15 | FIX精度、全経路精度、解利用可能率、訂正利用可能率を分離 | 各指標の母数と正解カバレッジをsummary JSONに記録 |
| R4-04 | 10/16 | CLAS、MADOCA L6E/L6D、RTCM SSRを別バリアントで評価 | 日本でのカバレッジ、受信機能、用途ごとの適用判定表 |
| R4-05 | 10/17 | L6途絶/欠落/未対応データの負テストを追加 | 成功に見えるfallbackを禁止し、degradedまたはunusableと失敗理由を出力 |
| R4-06 | 10/18 | 利用ガイド、スモーク、フル評価を確定 | 正解採点された母集団に限りサブメートル判定を表示 |
5. CIとレビュー計画¶
テストは実行時間と役割で分ける。
| 層 | 実行タイミング | 内容 |
|---|---|---|
| PR必須 | 各コミット/PR | JSON schema、CLI閾値失敗、欠落ファイル、小規模実データスモーク |
| Nightly | 1日1回 | 開発データのフルラン、成果物ハッシュ/数値許容差、実行時間 |
| Release gate | リリース候補ごと | 凍結済みホールドアウト結果の読み込みと全成果物契約の検証 |
レビューでは次の分離を必須とする。
- ソルバ変更と採点ロジック変更を同一差分に混在させない。
- 取得アダプタと配布データのライセンス確認を別担当が確認する。
- 閾値変更には、新値の根拠、影響する母集団、旧値での失敗結果を添付する。
- ホールドアウト失敗後は、対象を新たな開発データとして扱わない。
6. 体制と工数の目安¶
並行作業を行わない場合の目安は35〜43人日である。既存コマンドと採点器を 再利用する前提で、R1の原因調査や公開データの配布条件により増加し得る。
| 作業系統 | 目安 | 主な責任 |
|---|---|---|
| 測位/融合実装 | 12〜15人日 | R1原因修正、R2ソルバ接続、回帰防止 |
| データ/製品取得 | 6〜8人日 | GEONET/IGS/L6選定、配布条件、チェックサム、キャッシュ |
| 採点/成果物ツール | 10〜12人日 | 共通JSON、バンドル、検証コマンド、適用判定 |
| テスト/ドキュメント/レビュー | 7〜8人日 | 実データCI、負テスト、ガイド、リリース判定 |
最低体制は実装担当1名とレビュー/データ契約確認1名とする。 R1実装中にR2-00/R2-01を別担当が進められる場合に限り、8週間の不確実性を下げられる。
7. リスクと中止条件¶
| リスク | 兆候 | 対応/中止条件 |
|---|---|---|
| R1の発散が複合原因 | 最初の発散前に状態不整合が複数系統で発生 | 4系統を1つずつ無効化した再現テストを優先。閾値緩和で通過させない |
| ホールドアウト失敗 | run2またはrun3のいずれかが未達 | プロファイル提供を保留し、負の結果を保存。同データで再調整しない |
| GEONET/IGS取得条件が不明 | URLは存在するが自動取得/再配布条件が確認できない | データを同梱せずダウンロード手順のみにする。出自が固定できなければR2ソルバ調整を開始しない |
| 公開座標の元期/高さが曖昧 | ENU差の前提が一意でない | 精度ゲートを停止し、配線/再現性デモと表示 |
| 実データCIが過大 | PRテストが20分を超える、または外部配布元に依存 | PRはハッシュ固定スモーク、フルランはnightlyに分離 |
| L6データを再配布できない | 配布元条項で複製を許可していない | URL+ハッシュの物質化経路に切り替え、CIは許諾済み小規模フィクスチャで検証 |
8. 調査キュー¶
この節はR1〜R4実施時点の記録である。R1〜R4完了後の優先順位とR5以降の 完了条件は Application use-case development roadmap へ移管した。
R2がクリーン環境で再現できた後に、各候補を最大2人日で調査する。
- スマートフォン生GNSS: Android/Google公開形式を観測インターフェースに対応付け、 手作業なしで変換できるtrain/holdoutペアがあるか判定する。
- UAV: 動特性、姿勢、レバーアーム、出力周期、着陸経路メトリクスを監査し、 車両専用NHCなしで既存融合が対応できるか判定する。
調査の出力は、対応表、最小変換プロトタイプ、欠落機能、Go/No-Go判定に限定する。 構造物モニタリング、GNSS時刻サービス、インテグリティ/ジオフェンシングは、 R1〜R4の共通品質契約が安定するまで着手しない。
9. 直近10営業日の実行順序¶
- run1全区間の再現コマンドと入出力ハッシュを凍結する。
- bridge CSVに「最初の正常→異常」窓を抽出し、診断表を作る。
- 伝搬/方位初期化/速度更新/再アンカーを1系統ずつ切り分ける。
- 失敗を最小再現する単体または合成データテストを先に追加する。
- run1原因の最小修正を行い、無効時のデフォルト結果を保存する。
- 保存済みRTK
.posでIMU only/ZUPT/ZUPT+NHCを比較する。 - run1合格後に最大bridge age、精度退行、再捕捉ジャンプの閾値を凍結する。
- 1コマンド成果物バンドルとCI失敗経路を作る。
- 凍結設定でrun2/run3を各1回評価し、結果にかかわらず保存する。
- R1提供可否を判定し、R2の凍結済みデータ契約を次の実装入力にする。
10. 実施結果(2026-08-24)¶
| Release | 実装・実測結果 | 提供判定 |
|---|---|---|
| R1 | 1コマンドバンドル、非有限値/bridge/再捕捉ゲート、run1凍結、run2/run3各1回評価を完了。run3は利用可能率ゲート不合格 | 実装完了、車両プロファイル提供は保留。60秒超bridgeはunusable |
| R2 | IGS TSK2/TSKB 2024-01-01を開発日、01-02を封印ホールドアウトとして取得・相対静止・PPPを完走 | 相対はRTK ANTEX未適用のため実演限定。PPPは収束後の候補で測量当局レビュー必須 |
| R3 | raw/accepted POS、KML、PNG、segments、ROS2 metadata、summary、manifest、非再測位検証を実装。PPC run1可視化プロファイル合格 | 可視化用途のみusable。SLAM/地図は各プロファイルの別ゲートが必要 |
| R4 | QZSS公開L6を固定し、Tokyo run1全区間を真値採点。FIX RMS2D 0.352 m、FIX率10.704%、全経路RMS2D 41.862 m | degraded。FIX母集団のみサブメートルで、連続サブメートル用途は不合格。訂正ゼロはunusable |
成果物はoutput/use_cases/以下に保存した。負の判定は閾値緩和で
合格へ変更せず、用途境界としてガイドとマニフェストへ残している。